対戦の駆け引き・心理戦について
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対戦の駆け引き・心理戦について
中級者になると見えなくなるもの
ずいぶんと大きく出ましたが、ご了承ください。
さて、対戦を重ねていくと、どこかで初心者を脱して中級者になります。すると、明確な格下というものが出てきます。格下が出現すると見えなくなるものがあるんです。それが、駆け引き、心理戦です。
初心者同士で、仲間内でわいわい遊んでいる間は、例えば「波動拳を打つときに飛び込み攻撃を食らわせてやろう」といった心理的駆け引きがあります。もちろん、そこに至らずに、ガチャガチャやりあうレベルの初心者という場合もありましょうが、どのレベルにも最低限の心理戦があるはずです。パンチを食らわせてやりたい、昇龍拳を当ててやりたいとかも、心理戦といえば心理戦です。
でも、中級者となって格下が出現すると、心理戦をしたくなくなります。パターンやシステムでラクに勝てることがわかってくるからです。技量もそうですが、知識で勝てる。だから、極力省エネで勝つ。それ自体悪いことではありません。しかし、そこは大抵袋小路で、よほどワンパターンに持ち込める圧倒的キャラでもない限り、成長力が急速に落ちる罠だったりします。
中級者になると、自負が出てきます。
「自分はこれだけやってきたのだ、上手い人ともやり込んでいる。だから格下には負けたくないし、知識の面でもお前たちとは違うのだ……」
これが危険な傾向です。
この線路に乗っかってしまうと、人によっては戻ってこられません。そうして線路がなくなって、ゲームをやめてしまう人をたくさん見てきました。
どんなにがんばっても上手くならない、格下に追い抜いていかれる、許せない……。
わかります。とてもよくわかる。
でも、それは「やり方を間違っているからではないか?」とは思えませんでしょうか。
センス、才能といった言葉で片付けてしまいがちですが、そうではないところになにかがあるのではないかと考えてみてはどうでしょう。
どのみち知識量や技量で格下をあしらい、駆け引きをやめてパターンで勝とうという状況は長くは続きませんし、それを続けていると、自分が成長しません。脇の道に入ってどん詰まるだけです。どんどん思考が凝り固まり、知識だけが増えて、自負が強化されていく。そしていつか、なんらかの納得できる理由をつくってやめてしまうのです。
どうすれば駆け引き・心理戦を取り戻せるか
プレイスタイルに好き、嫌いはあるでしょう。特に一発の重たい古いゲームは、事故が起きれば負けてしまいます。それでも相手を一旦受け入れることです。相手を一旦受け入れるということは、自分の凝り固まった考え方、スタイルを一時的に捨てるということです。
つまり、自分をぶち壊して再構築することです。
これが果てしなく長い道です。中級者になるのは一瞬です。いい先輩に揉んでもらえばすぐです。
しかし、中級者からが長いのです。
作っては壊し、壊しては作る。
この解体リフォーム作業が長いんですね。
あ、徳島県で新築・リフォームされるかたはご連絡くださいね(スポンサー企業様、宣伝しておきましたよ!)。
更地に作るのは簡単なんです。いまあるものを手放し、壊し、片付けてやりなおすのは、作業量が倍では済みません。だからこそ長くかかる。格下と舐めていた初心者が急速に伸びてくるのが怖い。この勢いで抜き去られてしまうのではないかと気が気ではない。そんなときにこそ、一度間を取って、とりあえず勝てるパターン、システム、凝り固まった思考に陥っていないかを確認し、再構築する道を模索するのです。
この覚悟といいますか、柔軟性がなければ、一度順位づけが終わった相手には一生勝ち越せないことになります。自分の持ち物を捨て去る勇気と柔軟性、わかりやすくいえば、工夫する力ですね。これがある人は、パターンを壊しにいきます。結果的にめちゃめちゃに負けて、泥沼に陥ることもあるんですけど、そこでプライドが砕け散っていればこそ、浮かぶ瀬もあるわけです。
この修羅場をくぐっている人といない人は、どこか違うものです。また、くぐらなければ先がない場合が多いので、破竹の勢いで伸びてくる初心者に一時的に負け込んでも、修羅場をくぐり抜けた後、きっとあなたが勝ち越すようになるはずです。相手が修羅場、泥沼をくぐるまでの間は一応の安泰でしょうが、もはやいうまでもないことですが、相手が泥沼に踏み込んできたなら、あなたは次の泥沼に進んでいないといけませんね。
本論:心理戦について
さて、ここからが本論です。ここでは駆け引きや心理戦は単純なジャンケンだという話にはしません。それはくじ引きであって、ときには必要でも、心理戦のすべてではないです。すでに見てきたように、積み上げてきた修羅場の経験があれば、それが凄味になります。何試合か勝てても、総合では全然勝てない相手というのがいる場合、大抵はこの心理戦の凄味で負けています。
よーく観察してみてください。凄味を持った人は、あなたが勝った場合に、その行動を見て次の行動を変え、あなたを負かしにきますから。しかもその判断を極力遅らせてきます。怖くなって、あなたが技を振るの待っているはずです。そうやって情報を丁寧に収集し、類型化しながら対処してくる。これが一番おそろしいタイプです。
何も考えずに暴れ倒して勝つというスタイルは、大会などの一発勝負で大物食いの番狂わせを演じるのでおもしろいのですが、日頃の対戦やトータルで見ると勝てない場合が多いですね。そして、上記のように袋小路のどん詰まりに行きがちです。もっとも、暴れ倒すのが楽しい! というほがらかな人柄で、負けても全然苦しくない!! という人もいます。それはそれでいいのです。ここで問題にしているのは、暴れ倒して勝ちたくない、パターンやシステムで勝ちたいという理知的なタイプで、かつ負けるのが許せない人の話ですからね。常時強気の攻め、選択するのはお前、押し付けるのがオレ様というスタイルを否定しているわけではありません。人のタイプが違うのに、ヤケを起こしたような暴れやパターンで心理戦を拒否してしまうと、成長できないですよ、ということです。
それでですね、修羅場をくぐってきた凄味、情報収集に長けたプレイヤーが、「お前の本性を見せてみろ」と圧力をかけてきたとき。これが駆け引き・心理戦です。ジャンケンではない、私にとっての心理戦ということになります。このときに考えられる行動は3つ。
- 見せてやるよと強気に攻める
- お前が見せろよと待ち返す
- 飄々として選択しない
こんな感じです。1.の人は強気なスタイル。修羅場を暴力で乗り越えてきた人ですね。常に選ぶのは自分、対処するのはお前、という形です。それを崩さないからこそ強いのです。ということは、相手が普段やらない様子見の瞬間が出てくれば、それはなにかプレイ上の不安点があるということです。なにをもって不安に思ったのか。自分が起こした行動か、相手が選んだ状況か、ちょっと巻き戻って、そこにいたるまでを精査してみてください。きっとやり返す心理戦のキーポイントがあるはずです。なお、何も考えずに暴れている人と、考えがあって暴れている人には決定的な差があるという点だけは理解しておいてください。何も考えずに暴れている人は、凄味には繋がってこないように思います。
2.ですが、これは厄介な相手です。自分の手の内は見せないというスタイルで、徹底的に相手に選択させ、情報収集し、対応する。知識と技量があってはじめて成せる技ですが、一発勝負の世界ではコロッと負けるタイプでもあります。しょっちゅう格下にこぼすので「大して強くない人」という評価になりがちですが、やってみると勝ち越せないはずです。相手やその日の調子に左右されにくく、試合コントロール能力に長けます。なんかよくわかんないけど、毎回こういう展開になって負けるなあ……と思ったとき、それは相手がコントロールしているからかもしれません。そこにすら気づかれないように煙に巻くのもまた、待ち返すタイプの常道でもあります。
3.について。2.に比べれば厄介度は下がりますが、1.も2.のプレイヤーも苦にしないオールラウンダーです。火のように苛烈な攻めも、山のように動かない守備も、どこ吹く風といなすのがこのタイプ。相手の弱みに漬け込むのが主なスタイルですが、特定の戦法に固執せず、臨機応変に人をおちょくったような試合をします。ゲームへの理解が進むと、「この瞬間、この攻撃だけはしてはいけない、するはずがない」というお約束が増えてきます。それにこだわっているプレイヤーほど食われます。凝り固まってしまった中級者にとって最悪の相手かもしれません。真面目にやっているように見えないのに、勝てない。それがイライラに繋がるわけですけども、それは相手が特定の戦法を選ばないからであって、下手なわけではないかもしれませんよ。まだ見ぬ駆け引き、心理戦がここにあるような気もします。このタイプの狙いは、こちらの基礎部分をブレさせて壊すこと。万能型なので、特化タイプと正面からはやりあえないので、特化している部分を壊しにくるのですね。攻めタイプは黙らせて不安にさせ、守りタイプは焦らせて動かす。こうして相手を万能型に落とし込み、万能型としては一日の長のある自分の土俵でボコボコにするというのがスタイルです。
どのタイプでも共通していえるのは、精神的に猛烈に強いということです。簡単には折れないということです。強気の攻めスタイルだけが精神的に強く、あとは弱気でメンタルがダメというのは間違いです。言葉として適当かは別として、「お前が見せろよと待ち返す」人は山のような芯のあるプレイヤーです。接近戦になって、自分にチャンスがあるのに待つことは、そう簡単にできるものではありません。そこで投げられても、不意の攻撃をもらっても、「お前はオレにビビって技を選択したな?」と心理の風上に立つ。それくらいのポジティブシンキングといいますか、確かなプレイの重石があります。やってみればわかりますが、これが一番不気味でおっかないと思うはずです。
でも、大抵の場合、こういった「攻めない人」「オールラウンダー」のプレイヤーは評価されません。なぜか? 心理戦をそこまで煮詰めないからです。もしくは、煮詰められるゲームシステムにないからかもしれません。ただ単に様子見しているだけの瞬間に、どれほどの意義と価値があるのか。そこが見えてくるほど、相手の心臓のつかみ合いをしないんですよね。
どんなに動画を撮影したり、プレイスタイルをコピーしても、この画面上にない情報、心理戦については、習わないとわからないのです。いままでは本当に突き抜けてしまった連中同士が秘中の秘として、自然と体得してきたものだと思いますが、いま、改めて文字にしてみました。
拙い文章、内容で恥ずかしく存じますけれども、なんらかの一助となれば幸いです。
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