ゲーマーと生存者バイアス
目次
いま生き残っているゲーマーに話を聞いても……
格ゲーと生存者バイアス
生存者バイアスってものがある。
生き残った奴に生き残るための術を聞いても、実はなんら意味がないことがあるってはなしだ。
極端な例を出すと、100歳まで生きている老人に、
「長生きの秘訣ってなんですか？」
と聞いたとしよう。すると老人が、
「毎日5合の酒を飲むことだな」
といったとする。
じゃあ、これを実践したら100歳まで生きられるのか？
難しいだろうな。
どうしてこんなことが起きるかは、いうまでもないかもしれない。
5合も酒を飲んで内臓を痛めて死んだ奴らはなにもいえないからだ。
死人に口無しなのだ。
格ゲーでもそうかもしれないな、とフト思ったわけなんだ。
上級者やその上の達人たちにどうすればいいかを聞いたって仕方ないのかもな、と。
だって、そいつらは生き残っちまった連中だから。
苦しんでやめていった連中とは根本的に違う（かもしれない）。
データ上、無視すべき異常な例を取り出して一般化するのはよくない（かもしれない）。
オヤカタみたいなイカれた奴のはなしなんて、本来聞いちゃいかんのだ。
長嶋茂雄というプロ野球のスーパースターにして、
プロ野球を興行として一本立ちさせた人がいるけれど、
その人の言葉を聞いても理解できないんだよ。
メジャーリーガーになった松井秀喜だけは理解できたらしいけど。
格ゲーでも同じな気もする。
相手の動きの機微を見ていればわかるだろうっていわれて、
「ああ、なるほどわかるよな」とか、「わかるようになれるかもな」って
思えるのはごく少数で、それは一般的なアドバイスとして全然正しくないんだけれど、
ごく一部の人間、達人級になる人間たちにとっては正しいってこともある。
難しいはなしだよな。
広く普及させるのと、頂点を目指すのは、時として両立し得ないのだ。
反対に死者バイアスってのもあるんじゃない？
でも、こうも思うわけだ。
生存者バイアスがあるなら、死者バイアスもあるんじゃねえかって。
つまり、辞めていった連中の意見を聞いて、それを満たしたものを作ったら、
「まったく売れない」「人気が出ない」
っていうこと。数ヶ月程度は盛り上がっても、1年、2年、10年とは続かない。
そんなものになっちまうんじゃないかということだ。
同じゲームを10年、20年とやり込む異常者こそ大切なのに、
そもそもそこまで入れ込まない人に向けてものを作ると、
一過性で終わってしまう可能性もあるだろう。
格ゲーでも、シューティングでも、そのほかのゲーム、趣味でも同じかもな。
格ゲーなら、なんら練習しなくても相手をボコボコにしたいってのが
大多数の意見だろう。だとしたら、究極的に運の勝負に近づくだろうな。
いわゆるジャンケンだ。グーチョキパーだな。
しかし、死者バイアスともいうべき途中で辞めていった人間は、
自分が楽をして勝ちたいのだから、完全に運ではダメなんだよな。
常に相手は負けて、自分だけ勝たなきゃ納得できない。
完全に競技性を失うし、練習の意味はないし、
純粋な運でも納得できない。
彼らにとっては、勝ちが定まった接待の出来レースじゃないとダメなわけだ。
それじゃあ、対戦ゲームとして成立しないよなぁ。
シューティングだとしても、スコアを競い合って負けたら腹が立つから、
そういう要素はなしにしましょうってことになるだろうし、
手を繋いでみんなでゴールの徒競走みたいになる可能性もある。
こういう死者の意見を取り入れると危険なんじゃないかとも思うのだ。
雑なまとめ
全員が納得するものをつくるのが理想とされているけれど、
オヤカタはとんでもないことだと思う。
全員の意見が一致するのは「異常事態」だ。
不正選挙か、集計機器の誤作動か、悪意ある集団による投票か……。
とにかく通常、起こりえないことだよな。
全員が納得するものなんてそもそも出てこないくらい難しいし、
仮にできたとしても、それは凡庸極まりない、
誰も「欲しい！」とか「遊びたい！」とか思わない、
平均、普通の権化になっちゃうんじゃないかな。
トガった部分が気に入らないから丸くしろっていうんじゃなくて、
自分が気にいるトガったものを作る方向に行ってほしいよな。
また、初心者に不親切だと一方的に怒るんじゃなくて、
親切とはどういうことか突き詰めて考えてほしいとも思う。
「一切努力せず、自分だけきもちよくなりたい」が突き詰めた結論だったとき、
本当にそれでいいのかって思えるはずだからさ。
オヤカタは、努力したらある程度報われるようなものがいいと思う。
努力が報われないことがたくさんあるから、
ゲームの世界くらい努力が報われて欲しいと思うんだ。